[廃プラリサイクル] 電気・電子機器の廃棄物から派生するプラスチックの再利用、処理について [論文解説]

プラスチック・樹脂

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今回は廃プラリサイクルに関する以下論文について解説します。

論文タイトル

Applications, treatments, and reuse of plastics from electrical and electronic equipment

廃プラリサイクルに関する最新の論文を解説します。

現在の状況や課題などを、5分程度で読めるようにまとめているので是非参考にしてください!

この記事でわかること
・電気、電子機器の廃棄に関する概要、状況
・電気、電子機器廃物に含まれている物質について
・プラスチックリサイクルの課題、開発技術
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RYOTA

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論文の概要

キーワードプラスチックリサイクル、サーキューラーエコノミー、電子機器廃棄物
雑誌名Journal of Industrial and Engineering Chemistry
日付2022/3/25
機関NTU, Nanyang Technological University,
シンガポール
著者Chunmiao Jia他5名
URLhttps://doi.org/10.1016/j.jiec.2022.03.026
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この研究を一言でいうと?

2019年時点で世界で53.6百万トンもの電気、電子機器に関する廃棄物が出ており、2030年には74.7百万トンまで増えることが予測されている。

しかし実際にリサイクルされているものは僅かである。その理由としては使われているプラスチックが多様で、さらにプラスチックに含まれている添加剤(難燃剤など)が多様であり、ハロゲンなどの毒性のある物質も含んでいるためである。(これらを適切に処理しないと環境や人間に影響を及ぼす可能性がある。)

本論文ではこれらの廃棄物の状況、使われているプラスチック、添加剤の種類をまとめている。またこれらのリサイクルに関する技術についても詳細に述べられている。

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廃棄物の3-6%を占めるプリント回路基板について

MCナイロンの代表的な物性を示しました。

プリント回路基板

プリント回路基板は電子製品の重要な部品で、電子製品を解体した際に3-6%発生する。このプリント回路基板は主にエポキシ樹脂やガラス繊維から構成されている。

またプリント回路基板はおおよそ金属が40%、セラミック(SiO2、Al2O3)が30%、プラスチックが30%で構成されている。


ガラス繊維とは?
ガラスを溶融した後、引き伸ばすことで作られる。プラスチックにガラス繊維を混合して固めることで、プラスチック単体では得られない高い強度と靭性(物質の壊れにくさ)を持つ軽量な材料が得られる。また安価な材料であり幅広く用いられている。

電気・電子製品のプラスチックに含まれる添加剤について

電気・電子製品の種類や用途もが増えることで、プラスチックに求められる特性も増加。そのためその要望を満たすために多くの添加剤が開発されている。

難燃剤(frame retardants)

プラスチックを燃えにくくするための添加剤。最大で20%程度添加されることもあり、重要な添加剤。種類も豊富でハロゲン系、リン系、無機系がある。特に有害物質排除の観点からハロゲン系以外の難燃剤が注目されている。

熱、光安定剤(Heat and light stabilizers)

熱や光による分解を防ぐ物質。最大で5%程度添加する。塩化鉛などが使われており、重金属を含まないカルシウムや亜鉛などのものある。

顔料(pigments)

プラスチックを着色する添加剤。最大で1%程度添加する。

酸化防止剤(Antioxidants)

酸化によるプラスチックの分解を防ぐ添加剤。最大1%程度添加。

可塑剤(Plasticizers)

プラスチックに柔軟性を与えて加工しやすくするための添加剤。エステル化合物が一般的に使われている。

電気・電子製品の処理方法について

埋め立て処理

埋め立て処理はその名前の通り、埋め立て場に埋め立てることで廃棄物を処理する方法です。途上国などでは一般的で現在も多く実施されています。

課題

・廃棄物は数十年以上存在その場にとどまり土壌などの環境を破壊します。また廃棄物に含まれている有害物質が地下水や土壌中に溶け出すことで環境に悪影響を及ぼします。

欧州などでは2025年を目処に埋め立て処理をゼロにするなどの流れも出てきています。

廃棄物の分類と分離処理

廃棄物は金属、セラミック、プラスチックなどの様々な物質を含んでおり、一括でリサイクルをすることができません。そのため最初にこれらの廃棄物の分離、分類分けする必要があります。その方法として主流なのが人の手作業での分類ですが、現在は材料や素材の物性などの違いを利用して、自動で分類する方法も検討されています。

課題

自動で廃棄物を選別する技術がまだ不十分です

例えば近赤外線(NIR)分光法やラマン分光法が検討されていますが、非常にコストがかかります。

また最近ではポリマー中の金属とハロゲンを検知する手段としてXRFの応用が進められています。新規の方法としては、レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)が各種プラスチックやハロゲンを分類できるとのことで注目されています。

しかしこれらの技術による分類はまだ不十分で複雑であることが課題です

そのためより効率的な方法や人工知能による選別などが期待されています。

熱分解(熱分解クラッキング)

熱分解では500℃以上の温度が必要でエネルギーコストが大きいのが問題である。そのため触媒を利用した熱分解の検討が行われている。

触媒としては、ゼオライトやメソポーラスシリカが使われている。しかし現状目的生成物の選択性が低いことや、耐久性が低いことが課題で新規の触媒開発が進められている。

脱ハロゲン

臭素を含む難燃剤は難燃化の効果が高く広く使用されている。これらの難燃剤を含むプラスチックを処理する場合は脱ハロゲン処理が必要となる。

その方法としてはハロゲンを熱分解により塩化水素や臭化水素に変換して回収する方法あ各種触媒により回収する方法があり、検討が進められている。

まとめ

今回はApplicatioApplications, treatments, and reuse of plastics from electrical and electronic equipmentの論文を通じてプラスチックリサイクルの現状について解説しました。今後カーボンニュートラルの達成を目指した動きが加速する中で、この廃棄物のリサイクルも積極的に進むことが予測されますので、是非今後も動向をチェックしてください。

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