プラスチックのメカニカルリサイクルを語る上で、欠かせないのが添加剤です。
技術の向上により、今後メカニカルリサイクルによる生産量は3倍ほどに増えるとの予測もされるほどです。
メカニカルリサイクルに使用される添加剤とその役割について、誰でもわかる様に解説します。
リサイクル添加剤
プラスチックは高温で成形加工されるされます。そのため、通常は酸化防止剤の「フェノール系酸化防止剤」「リン系酸化防止剤」が添加されているパターンが多いです。
また、家電の様な長期間使用される製品には、長期間の熱負荷に耐える様に「イオウ系の酸化防止剤」などが使用されます。
更に、耐候性が求められる用途には紫外線吸収剤(UVA)やヒンダートアミン系光安定剤(HALS)などが添加されます。
添加剤はどれだけ必要?
上記した添加剤は自身の機能を示した後、徐々に消費・分解されます。以下には6年間使用されたPP製の洗濯機水槽中の酸化防止剤の残存量を示しています。
表1 回収洗濯機水槽PP中の酸化防止剤の残存量
種類 | 商品名 | 酸化防止剤量(%) 出荷時 | 酸化防止剤量(%) 回収時 |
フェノール系 | アデカスタブAO-60 | 0.084 | 0.066 |
リン系 | アデカスタブ2112 | 0.088 | 0.06 |
この表から分かる通り、どちらの酸化防止剤も0.02~0.03%程度しか消費されていません。このまま使用しても10年程度は問題ないように思われます。
リサイクル剤の素性がわかっている場合、消費した分の添加剤を添加すれば良いのですが、一般消費されたプラスチックでは、どの程度の添加剤が残っているかを判別することは難しいです。
そのため、以下ではいくつかのケースを想定し、推奨できる添加剤の一覧を示しました。樹脂の種類は汎用的なPP・PE・PS。用途は家電・日用品・建材などを想定しています。
表2 プラスチックのリサイクルに使用される一般的な添加剤
種類 | 商品名 | 特徴 | 推奨添加量(部) |
フェノール系 | アデカスタブAO-60 | 汎用的なタイプ | 0.1~0.2 |
フェノール系 | アデカスタブAO-50 | PE系との相溶性良い | 0.1~0.2 |
フェノール系 | アデカスタブAO-20 | 変色が少ない。耐光性良い | 0.1~0.2 |
フェノール系 | アデカスタブAO-80 | 変色が少ない。熱酸化防止効果高い | 0.1~0.2 |
フェノール系 | アデカスタブAO-330 | 耐加水分解性が良い | 0.1~0.2 |
リン系 | アデカスタブ2112 | 汎用的なタイプ | 0.1~0.2 |
リン系 | アデカスタブHP-10 | PEフィルムなどに適用 | 0.1~0.2 |
リン系 | アデカスタブPEP-36 | 変色が少ない。熱酸化防止効果高い | 0.1~0.2 |
硫黄系 | DMTDP | 汎用的なタイプ | 0.1~0.2 |
硫黄系 | AO-412S | 熱酸化防止効果高い | 0.1~0.3 |
HALS | アデカスタブLA-52 | 熱酸化防止効果高い | 0.1~0.3 |
HALS | アデカスタブLA-502XP | 高耐候性。熱酸化防止効果高い | 0.2~0.5 |
HALS | アデカスタブLA-77Y | 汎用的なタイプ | 0.1~0.3 |
紫外線吸収剤 | アデカスタブLA-36 | 汎用的なタイプ | 0.1~0.2 |
紫外線吸収剤 | アデカスタブLA-32 | 初期着色の少ない | 0.1~0.3 |
紫外線吸収剤 | アデカスタブ1413 | PE系に適する | 0.1~0.2 |
金属不活性剤 | アデカスタブZS-91 | 汎用的なタイプ | 0.1~0.3 |
金属不活性剤 | アデカスタブCDA-1 | 金属不活性化効果が高い | 0.1~0.3 |
加工時の安定剤
リサイクル剤は回収され、再び材料として加工・成形されます。加工安定剤(高温時の熱劣化抑制)としてはリン系の酸化防止剤が使用されます。汎用的にはアデカスタブ2112などです。
その際、一般的にはリン系の酸化防止剤と併用して、フェノール系酸化防止剤します。
長期耐熱性
家電や自動車など長期に使用される場合は、イオウ系の酸化防止剤を使用します。汎用的なDSTDPや、長期安定効果の高いアデカスタブAO-412Sなどが使用できます。
耐候性
リサイクル剤の用途として、コンテナ・ベンチ・土木シート・パレットなど屋外で使用されるものも多く存在します。
プラスチックに耐候性を付与するには、紫外線吸収剤(UVA)・ヒンダートアミン系光安定剤(HALS)などが使用されます。
ワンパックで使用できるリサイクル添加剤
プラスチックゴミによる環境汚染が問題になる中、各社からワンパックでリサイクルに使用できる添加剤が販売されています。
以下にその添加剤の一部をご紹介します。
ADEKA:アデカシクロエイドシリーズ
ADEKAのアデカシクロエイドシリーズは、ポリプロピレンを中心としたポリオレフィンの複合材にワンパックで使用できる添加剤です。
・酸化防止剤ワンパックタイプ
アデカシクロエイドUPR-001を0.2%添加することで、無添加のリサイクルPPと比較して、約1.5倍ほど熱安定性を向上させることが可能です(リサイクルPPは30%)。
・核材ワンパックタイプ
また、アデカシクロエイドUPR-011は0.4%添加することで、バージンPPに近い機械物性を得ることができます(リサイクルPPは70%)。
BASF:IrgaCycleシリーズ
BASFはリサイクルにおける新しい添加剤パッケージとしてIrgaCycleを2021年に上市しました。
再生材には、樹脂の劣化を促進する様な不純物や、汚れが含まれるケースが多数あります。IrgaCycleはこれら再生材の物性を改善する添加剤です。
現在は使用用途ごとに、HDPE向け・フィルム(LDPE、LLDPE)・PP・屋外用途向けなどのグレードが上梓されています。
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