だれでも分かる [ゼオライト触媒の劣化要因] メカニズム、原因について徹底解説

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本記事では化学メーカーで研究開発をしている私が「ゼオライト触媒の劣化要因」ついて解説していきます。

ゼオライトは多くの化学プロセスで現在用いられている触媒ですが、「劣化しやすい=寿命が短い」という欠点があります。

それではこのゼオライト触媒はどのように劣化するのでしょうか?

その原因やメカニズムについて詳しく解説していますので是非参考にしてください。

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まずはゼオライト触媒の劣化の要因を大まかに理解

それではまず、

「ゼオライト触媒がどのように劣化するのか?」

ということを見ていきましょう。

ゼオライトの主な劣化原因は大きく分けて以下の3つが挙げられます。

  • カーボン質の付着(炭素析出)による細孔の閉塞
  • 有機物が蓄積することによる細孔の閉塞
  • 脱アルミニウムによる結晶構造の変化
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劣化要因1:カーボン質の付着による細孔の閉塞

劣化の要因の1つ目は「カーボン質の付着による細孔の閉塞」です。

このカーボン質の付着は「炭素析出」や「コーキング」と呼ばれ、ゼオライトだけではなく、多くの触媒の劣化要因として知られています。

この炭素析出は触媒の様々な反応の過程で生じ、例えば以下のようなものが代表的です。

2CO(気体) → C(固体)+ CO2 (気体)

CO(気体)+ H2(気体)→C(固体)+ H2O(気体)

このように気体同士の反応の中で固体の炭素が生成され、それが触媒の表面や細孔に残ってしまいます。→炭素析出

その結果、反応できる箇所(活性点)が覆われてしまい、反応できなくなります。→触媒劣化。

しかし炭素析出による劣化は炭素を高温で燃やして除去できるため、再生が可能です。

そしてゼオライト触媒では特にこの「炭素析出」が起きやすく、ゼオライト触媒が劣化してしまう主要因になります。

劣化の対策方法

炭素析出による劣化の対策は基本的に「なるべく炭素が析出しないようにする」ということです。

この炭素はできた生成物が逐次的に反応していき、その結果生じることが一般的です。

そしてこの逐次的な反応はゼオライトの酸点で起きることが知られています。

そのため、ゼオライトはケイ素とアルミニウムで構成されていますが、アルカリ金属やリンなどでゼオライトを修飾し、酸点を調整することで劣化を抑制する方法などが知らています。

再生方法:炭素の燃焼

再生方法は高温(500℃~700℃程度)で酸素と反応させることで、炭素を燃やすという方法が一般的です。(カーボンバーン)

この反応は以下の反応で、炭素が酸素と結合してCO2になるというものです。

C(固体)+ O2(気体) → CO2 (気体)

ゼオライトの劣化は炭素析出が主要因であるため、この再生方法は非常に良く行われている方法です。

ゼオライトの再生方法については以下記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

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劣化要因2:有機物が蓄積することによる細孔の閉塞

2番目の劣化要因は、「有機物がゼオライトの細孔内に蓄積することによる劣化」です。

これは劣化要因①の炭素析出と似ています。

炭素析出の場合は触媒の表面に炭素が生成するものです。

一方こちらは反応でできた物質が細孔の中に閉じ込められてしまい、反応させたい物質が細孔の中に入れないような状況です。

その結果、こちらも炭素析出と同じで反応できる場所(活性点)がなくなっていくことで、触媒が劣化していきます。

この有機物の蓄積も炭素析出と同じで、有機物を除去することで、再生ができます。

劣化の対策方法

この劣化の対策は基本的には炭素析出と同じです。

なるべくゼオライトの細孔内に留まる物質の生成を抑制することが効果的です。

この細孔内に留まる物質や比較的サイズが大きい二量化物などであることが一般的です。

そのため、この二量化物を反応中に分解できるような機能を触媒に持たすことで、劣化が抑制できます。

具体的にはこれらの二量化物は水素化分解によって分解できるため、こういった反応を促進できるPtをゼオライトに組み込み、反応中に水素を流して上げることで、これらの物質を分解することで触媒の劣化を抑制することができます。

再生方法:蓄積した有機物の燃焼

有機物の蓄積による劣化は「炭素析出と同じ方法で再生」することができます。

具体的には高温で酸素の条件下でこれらの有機物を反応させることで、燃焼してCO2となり、除去することができます。

劣化要因3:脱アルミニウムによる結晶構造の変化

3番目の劣化要因は「脱アルミニウムによる結晶構造の変化」です。

この劣化は簡単にいうと、「反応により触媒が壊れてしまう」という現象です。

そのためこの脱アルミニウムは最も深刻な劣化で、一度壊れてしまった触媒は基本的に再生ができません。

それではこの脱アルミニウムはどういう現象でしょうか?

まずゼオライトは以下の図のようにケイ素とアルミニウムと酸素から構成されています。

ゼオライトの構造 出典:wikipedia

そして脱アルミニウムはこの構造からアルミニウム(Al)が抜けて、結果として触媒が劣化(構造が壊れる)する現象です。

この脱アルミニウムは高温で水とアルミニウムが反応することで、加水分解を起こし、アルミニウムが抜けることで起きてしまいます。

このように一度アルミニウムが抜けてしまうと、結晶構造が変わってしまうので再生は困難になります。

劣化の対策方法

脱アルミニウムはゼオライトのアルミニウムと水が反応(加水分解)することで起きます。

そのためまず一番大事な劣化対策としては、反応中に水が入らないようにすることです。

そのため、ゼオライトを用いた反応ではなるべく水を使用しない条件下で行うことが一般的です。

またゼオライトのアルミニウムを安定化させるために、Agがゼオライトに添加するなどのことが行われています。

その他事前にゼオライトを化学的にわざと脱アルミニウムさせることで、抜けやすいアルミニウム分を脱アルミニウムさせることで安定化させるなどの対策も行われています。

再生方法→脱アルミニウムによる劣化は再生不可

脱アルミニウムを起こすことで、結晶構造が変化してしまいます。

こうなると炭素析出などのように燃やして再生することはできません。

そのため、脱アルミニウムの対策をすることはゼオライト触媒では不可欠になります。

まとめ

今回はゼオライトの劣化要因について解説しました。ゼオライト触媒は大変有用な材料ですが、このようにゼオライトは多くの要因で劣化してしまいます。

しかし、これらの対策を行うことでゼオライトは商業的に幅広く利用されていますので、是非参考にしてください。

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