誰でもわかる【熱可塑性エラストマー(TPE)とは】種類・特性・用途

プラスチック・樹脂

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熱可塑性エラストマー(TPE)は、その汎用性の高さから私たちの身の回りで非常に沢山使用されています。

・熱可塑性エラストマーの用途や特性を知りたい!

・熱可塑性エラストマーを使用したいけど、どんな種類があるの?

そんなお悩みの方。「誰でも簡単に理解できる」ように熱可塑性エラストマーについてまとめました。種類ごとの特性・用途も記載していますので、ぜひ参考にして下さい。

熱可塑性エラストマーを一言で

「ゴムのような弾力」を持っていて、熱可塑性なのでプラスチックのように「簡単に成形加工ができる」プラスチックのことです。

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熱可塑性エラストマー(TPE)の概要

熱可塑性エラストマーは常温では「ゴム弾性」を示し高温では熱可塑性プラスチックと同様に可塑化され「成形加工が容易」な材料です。

構造

基本的には、「硬質高分子物質」と「軟質高分子物質」を組み合わせることで上記のような性質を有します。そのため、強度を付与するための「ハードセグメント」ゴムの弾性を有する「ソフトセグメント」が結合した構造を持っています。

通常のゴムの場合、加硫反応による架橋化によりゴム弾性を保持します。熱可塑性エラストマーは加硫を必要としないため、通常の熱可塑性プラスチックと同じように成形ができます。こうした構造から、熱可塑性エラストマープラスチックとゴムの両方の性質を持った材料です。

特性

熱可塑性エラストマーはたくさんの長所を持っており、汎用的に様々な分野で使用されています。以下に、熱可塑性エラストマーの長所と使用上の注意事項を示しました。

長所

・設計自由度が高く、生産性向上に貢献

・射出成形や押出成形など加工が簡単

・複数の成分を含めた加工が可能

・リサイクルが可能

・広い温度領域で使用可能

・着色性に優れる

注意点

・高温での使用には制限がある

・成形収縮する

・耐薬品性が低いものもある

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熱可塑性エラストマーの(TPE)種類・特性・用途

熱可塑性エラストマーは上記したように「ハードセグメント」と「ソフトセグメント」からできているため、以下の図に示すようにたくさんの組み合わせが可能です。

たくさんの種類がある中でも、スチレン系・オレフィン系・ウレタン系・ポリエステル系を4大熱可塑性エラストマーと呼びます。ここでは代表的な熱可塑性エラストマーについて説明します。

熱可塑性エアラストマーの種類

スチレン系(SBC)

主な材料

  • SBS:スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体
  • SEBS:スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体
  • SIS::スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体

スチレンブロック共重合体(Styrene Block Copolymers, SBC)と呼ばれます。熱可塑性エラストマーの中でも汎用性の高い材料です。硬いスチレンのハードブロックと、柔軟なブタジエンやイソプレンで構成されています。

SBCは、樹脂や添加剤、フィラーなど多くの素材との相性が良いため、幅広い用途で使用されています。流動性が良好で、着色自由度が高く、耐寒性、耐熱老化性に優れる材料です。

主な用途

  • 自動車部品(内装材、グリップ、チューブなど)
  • ホース、チューブ
  • 工業品(建材用シート、アスファルトブレンド用など)
  • 日用品(文具、グリップ、靴底、スポーツ用品、ラミネート用途など)
  • 医療用途(注射器ガスケット、各種チューブ、キャップなど)

オレフィン系(TPO)

 オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO:Thermoplastic Olefinic Elastomer)は、PPやPE等のポリオレフィンがハードセグメントであり、エチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)などのゴム成分がソフトセグメントである熱可塑性エラストマーです。

オレフィン系は他のエラストマーと比較し、比重が軽く(0.86~0.88程度)、スチレン系に次いで耐熱性に優れ、対候性に優れるといった特徴があります。

軽量で成形性が良いので、自動車の内装材など高い耐久性や、耐摩耗性を必要とする製品にも使用されます。

主な用途

  • 自動車部品(バンパー、エアホース、内装表皮材など)
  • ホース・チューブ
  • 工業品(パッキン、ローラー、プロテクタ、ベルトなど)
  • 日用品(文具、グリップ、フィルムなど)

ウレタン系(TPU)

熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic Polyurethanes, TPU)は、ポリウレタンのハードセグメントと、ポリオールまたはジオールなどのソフトセグメントからできています。原料の種類や合成方法によって広い範囲で物性や付加機能を選択することができます。

優れたゴム弾性・耐摩耗性・対候性などを持っていることから、日用品用途だけでなく、工業用途や自動車部品等に幅広く使用されています。

  • ホース・チューブ
  • フィルム、シート
  • 工業品(各種ギヤ、ローラー、タイヤ、コンベヤベルトなど)
  • 自動車部品(ギアノブ表皮、カバーなど)
  • 電線・ケーブル

エステル系(TPC)

ポリエステル系熱可塑性エラストマー(Thermoplastic polyester elastomers, TPC)は、高結晶で融点の高いポリエステルをハードセグメントに、非晶性のポリエーテルをソフトセグメントに持つ直鎖状のブロック共重合体です。

TPCは、結晶性の高いハードセグメントの剛性により、広い温度範囲で高い機械的強度を有します。耐熱性、耐薬品性、耐老化性にも優れた材料です。

更に、TPCは良好な電気絶縁性を持ち、耐屈曲疲労性や引裂強度にも優れているため、自動車部品、工業用品、シューズなどにも使用されています。

  • 自動車部品(エアダクトホース、ドアラッチなど)
  • 工業品(パッキン、プロテクタ、ローラー、ベルトなど)
  • ホース・チューブ
  • 日用品(シューズ用ソールなど)
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熱可塑性エラストマー(TPE)の成形加工

上述の通り、熱可塑性エラストマーはゴムとプラスチック両方の性質を持つため「成形性に優れる」材料です。

実際に熱可塑性エラストマーがどのような成形方法で成形されているかを示しました。

  • 射出成形
  • 押出(フィルム・シート・異形)
  • ブロー(ダイレクト・インジェクション・延伸)

まとめ

熱可塑性エラストマー(TPE)は常温では「ゴム弾性」を示し高温では熱可塑性プラスチックと同様に可塑化され「成形加工が容易」な材料です。

強度を付与するための「ハードセグメント」ゴムの弾性を有する「ソフトセグメント」があるため、様々な組み合わせができ、幅広い性能を示します。

汎用性が非常に高いため、私たちの身の回りで沢山使用されています。この記事を参考に、熱可塑性エラストマーを使用した材料設計・成形に役立てば幸いです。

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