ABS樹脂は汎用プラスチックの中でも、比較的に強度・耐衝撃性・耐熱性に優れるため、多くのシーンで使用されます。
身の回りでも多く使用される樹脂であるため、皆さんにとっても、馴染みの深い樹脂と言えます。そんなABS樹脂の特性・用途についてわかりやすく解説します。

この記事では以下について解説します
・ABS樹脂の特性
・ABS樹脂の物性
・ABS樹脂の用途例
・ABS樹脂の加工・成形
ABS樹脂の特性

概要
ABS樹脂はアクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン(Butadiene)・スチレン(Styrene)の共重合体からなります。
これら3つの頭文字を取って、ABS樹脂と呼ばれています。機械的特性を得るために、開発には色々な経緯をたどりましたが、「物性のバランスの良さ」から現在のABS樹脂となりました。
非結晶性の樹脂ですが「共重合体」であることから、自然色は不透明です(近年では、マーケットの需要に応じて調整を行った、透明のものもあります)。
2つ以上のモノマー(原料)からなる高分子のことです。通常の非結晶性樹脂は透明色ですが、共重合体の場合は2つ以上の異なる構造があります。2つ以上の構造の違いから、光が乱反射を起こすことで不透明な樹脂となります。
汎用プラスチックの中でも機械的特性のバランスに優れるため、多くの分野で使用されるのが特徴です。日本国内において、年間50万トン以上使用されていると言われています。
特徴
ABS樹脂は一般的に使用される機会も多く、沢山の長所があります。
以下にABS樹脂の長所と使用時の注意点を示しました。
・汎用プラスチックの中でも、機械的特性・耐衝撃性に優れる(物性バランスの取れた材料)
・塗装やメッキなどが最も容易なプラスチックの1つであり、外観部品として使用することが可能
・流動性が良く、あらゆる成形がしやすい
・成形収縮率が低く、成形時の寸法安定性に優れる
・成形のしやすさから、強度や耐熱を強化した応じたグレードが豊富に存在する
・リサイクル材として、繰り返しの使用が可能
・耐候性はあまり良くないため、屋外での使用に適さない
・一部の有機溶剤に弱い
ABS樹脂は「物性バランス」に優れ「成形性」が良い材料です。屋外での使用・有機溶剤には注意が必要ですが、それらを補うような「特殊グレード」が多数あるのも魅力の一つです。
物性
前述した通り、ABS樹脂は物性のバランスに優れた樹脂です。代表的な物性を下表に示しました。

※ABS樹脂は、ガラス充填等の強化グレードなども存在します。プラスチックはグレードにより物性は変化します。上記の表はあくまでも一般的な指標として参考にしてください。強化グレードの物性は各メーカーのサイトに記載されているため、そちらを参考にして下さい。
ABSの用途例

ABS樹脂は成形性が良く、射出・押出・真空・カレンダーといった、ほとんど全ての成型方法が可能です。
その中でも、射出成型品は特に多くのシーンで採用されています。
身の回りの製品では、パソコン・テレビ等の家電における外装部品として使用されます。また、玩具では「レゴブロック」にもこのABS樹脂が使われています。
以下に各分野での使用用途を記載しました。汎用性の高さから、身近な製品に数多く使用されています。
- 電化製品 エアコン・テレビ・パソコン・掃除機・洗濯機・冷蔵庫
- 自動車部品 ラジエーターグリル・コンソールボックス・ランプカバー
- 一般材 玩具・化粧品容器・トイレ・キャリーバック・時計・スポーツ用品・楽器
ABSの加工・成形
ABS樹脂は優れた汎用プラスチックとして、化学系メーカーの多くが取り扱っています。
どのようなメーカーが取り扱っているか、用途ごとにご紹介します。
射出成形
先に述べたように、ABS樹脂は成形のしやすさから、特に射出成形で使用される機会が多いです。塗装やメッキ等が容易なのが特徴ですが、成形時の表面光沢も良いため、そのままでも外観部品として使用することができます。
強度や耐熱性を強化した「ガラス充填」や「難燃」等、グレードが多いため、使用用途に応じた選択をすることが可能です。
取り扱いメーカーは以下の通り。
- 東レ(トヨラック)
- ダイセル(スタイラック)
- テクノUMG(テクノABS)
切削加工
切削加工においても、旋盤・フライス向けに材料はあります。
ただし、接着や塗装を必要とする機会が少ない切削加工品の業界では使用頻度は少ないです。そのため、MCナイロンやPOMとひかくするとあまり一般的ではないかもしれません。
取り扱いメーカーは以下の通りです。
- タキロンシーアイ
- ナック・ケイ・エス
まとめ
ABS樹脂はコスト的にも安価で、皆さんの身の回りで多く使用される樹脂です。高付加・高強度で使用することが無い場合、まずはこのABS樹脂を検討するのが手っ取り早いかと思います。
特に成形面に優れるため、色々なシーンで活躍できるABS樹脂は、今後益々活躍する樹脂製品の1つです。
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