誰でもわかる【MOFとは】概要から合成方法まで徹底解説

この記事を書いた人

総合化学メーカーで研究開発・新規事業開発を担当。

化学や事業開発に関する情報を「分かりやすく、深く理解できる」ことを目指して発信中。

昨年は葛藤の中転職活動を行い、最初は苦労するも自らの視座が高まったことから転職活動についても積極的に情報発信しています!

👉【体験談】30代で大手化学メーカー研究職に転職!年収300万UPできた理由

化学の知識

※当サイトは、アフィリエイト広告を利用しています。

最近注目されている多孔質材料MOFがあります。

MOFは水素の貯蔵やCO2の変換、水の浄化などの応用が検討されている、次世代の多孔質材料です。

今回はこのMOFはについて化学メーカーで勤務する私が世界一わかりやすく解説します!

スポンサーリンク

まずはMOFについて1分で概要を理解

まずは多孔質材料について大まかに理解していきましょう!

まずMOFはMetal Organic Frameworksの略で、モフと呼ばれます。

そして日本語では金属有機構造体です。(日本でも基本的にはモフと呼ばれます。)

ちなみに多孔性配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)と呼ばれることもありますが、基本的にMOFで呼ばれることが多いです。

たまにPCP、PCP/MOF(ピーシーピーモフ)と呼ぶ方もいるので、一応覚えておいてください!

そしてMOFはこの名前の通り、金属イオンと有機分子からできている多孔質材料です。

多孔質材料と聞くとゼオライトや活性炭が最も有名ですが、これらはAlやSiなどの無機化合物からできています。

これに対して、MOFは金属と有機化合物からできているのが最大の特徴です。

そのため、ゼオライトや活性炭などとは異なり、非常に柔軟なある構造を持っており、その特徴を活かして分離膜、吸着剤、触媒など、様々な応用が検討がされている次世代材料です。

注意してほしいのが、MOFはあくまで、有機化合物と無機化合物からなる多孔質材料の総称です。そのためMOFにはたくさんの種類があり、これまで10万種類以上のMOFが合成されています。

スポンサーリンク

MOFの特徴、MOFには魅力がたくさん

ゼオライトなどを圧倒的に上回る比表面積

MOFの最大の特徴はゼオライトなどの他の多孔質材料を圧倒的に上回るその比表面積です。

比表面積とは? 分かりやすく解説

比表面積について簡単に説明します。

まず目に見えないようなたくさんの穴が開いている材料のことを多孔質材料といいます。

この多孔質材料をビー玉のような丸い物質だとイメージしてください。多孔質材料はこのビー玉に無数の穴が開いているイメージです。

そしてこの微細な穴=1つの部屋、とイメージしてください。

そうすると、比表面積が大きい=部屋の数が多い、ということを意味します。

そのため、比表面積が大きい=たくさんいろいろなものを収納できる!

というイメージです。

ゼオライトは500m2/g程度の比表面積ですが、MOFは1000g/m2以上あり、中には5000m2/g以上のMOFも見つかっています。

このように大きい比表面積を持っているため、多くの物質を収納できるため、吸着剤や触媒などに積極的に応用が検討されています。

高い構造の柔軟性

ゼオライトや活性炭は無機化合物からなる多孔質材料のため、その構造や骨格は非常に剛直です。

一方MOFは有機分子と金属イオンからなります。

そのため高い柔軟性を持っています。

例えばゼオライトは活性炭は公園にあるジャングルジムのイメージです。

一方MOFはジャングルジムのように堅いイメージではなく、一個一個の柱がゴムのような柔軟性を持っているイメージです。

そのため、堅いゼオライトや活性炭は一度物質を吸着したら(部屋に入れたら)、なかなかその中から取り出すのが難しいです。

これに対してMOFでは少し熱や光を与えることで細孔のサイズ(部屋のサイズ)が柔軟に変わるため、中の物質を簡単に取り出すことができます。

この利点も吸着剤などに積極的に検討される理由です。

まとめると、MOFはゼオライトなどよりも多くの部屋を持っているため、たくさんの物質を収納することができ、構造も柔軟なため取り出すのも簡単である。という利点を併せ持っています。

スポンサーリンク

MOFの作り方、合成方法

MOFにはたくさんの優れた特徴があることがわかりましたね!

しかしMOFにはまだまだ注目されている理由があります。それはMOFの多様な合成方法です。

他の多孔質材料と異なりいろいろな合成方法が開発されていますので、詳しく説明していきます。

MOFを作るのは簡単!? 多様な合成方法が特徴

まずMOFは金属錯体と有機の配位子が連続的に規則的にずっと繋がっているイメージです。

そして最大な特徴が以下の図のように金属イオンと有機配位子がパズルのように組み上がるイメージです!

MOFの作り方
出典:材料科学の基礎

例えばゼオライトやメソポーラスシリカでは、構造規定剤という型を使います。

クッキー作るときに、星型の型の中に液体を入れて、焼いて目的の形のクッキーを作るイメージです。

この時のデメリットは構造規定剤(型)が非常に高い、焼く温度が500℃以上でエネルギーがかかる。

といったことがあげられます。

一方MOFはこういったものが必要ありません。これが最大の特徴です。

極端にいってしまえば、その対象のMOFを構成する有機化合物と無機化合物を混ぜて撹拌(モノによっては圧力釜に入れる)すればできます。

MOF合成法1 溶液法 最もシンプル

最もシンプルなMOFの合成法は溶液法です。

これは簡単にいうと原料を用意して混ぜるだけです。非常にシンプルな方法ですが、原料である有機化合物と無機化合物がパズルのように組み上がって結晶ができていきます。

また混合する際の速度を調整することで、結晶のサイズをコントロールすることも可能で基礎的な研究などにも良く用いられる合成方法です。

なお混合する際は熱などもかけず、常温、常圧で行います。

MOF合成法2 水熱合成(ソルボサーマル)

水熱合成(ソルボサーマル)は簡単にいうと圧力釜で煮込むイメージです。

溶液反応は基本的に常温、常圧で行います。しかしMOFの種類によっては常温、常圧では反応がなかなか進まないものもあります。

そういったものに対しては、水熱合成を用います。

(カレーのお肉を早く柔らかくするために、圧力鍋を使うイメージですね!)

水熱合成ではオートクレーブというテフロンできた耐圧容器にそれぞれ原料を入れて、100℃ぐらいで数時間おいておくト、結晶ができてきます。

できた結晶(沈殿物)をろ過することで、MOFが得られるという非常にシンプルな方法です。

MOF合成法3 固相合成 最近注目の方法

固相合成は簡単かつ環境に優しい合成方法として最も注目されている合成法の1つです。

これまでの溶液法や水熱合成は原料を溶媒に入れてから、撹拌したり熱したりして合成していました。

そのため溶媒を使うことで環境に易しくなかったり廃棄物が出るというデメリットがあります。

一方固相合成は簡単にいうと、原料を機械的に混合することで合成する手法です。

具体的には、原料(固体)を乳鉢やボールミルで混ぜることで、MOFができます。

私も最初はこんなことが本当にできるのか?と思いましたが、私も実際に行い、乳鉢で混ぜるだけで合成することができました。

固相合成のメリットは溶媒を用いないため、非常に低コストで合成することができます。

ちなみに混ぜる時間は10分~60分で収率もものによっては100%近く得られます。

デメリットとしては、粒子径の制御などが他の手法と比較して難しい点が挙げられます。

MOFの種類 これまで10万種類以上が合成

MOFは金属イオンと有機分子を組み合わることで様々なものが合成できます。

そして現在は100,000種類以上のMOFが合成されています。ちなみにゼオライトは200種類程度しかないことを考えると、いかにMOFが柔軟に合成できるかが分かりますね。

以下の図にはMOFの中で代表的なMOFと原料を載せています。

この金属イオンや有機分子を変更することで多様なMOFの合成が可能になります。

出典:引用文献1

MOFの応用分野

MOFはその特徴を活かして様々な分野への応用が進められています。

今回はその中でも代表的なものを紹介していきます!

貯蔵・吸着

まずはMOFの柔軟性と比表面積を生かした、貯蔵や吸着です。

例えばカーボンニュートラルの実現に向けて、新しいエネルギー源として水素が注目を集めています。

しかし現在問題になっているのは、この水素をどうやって運ぶかです。

この水素の運搬にMOFが検討されています。

MOFは他の多孔質材料と違って、比表面積が大きいため、たくさんの水素を運ぶことができます。そしてその取り込んだ水素を簡単に吐き出すこともできます。

こういった水素社会の実現にMOFは注目されています。

分離

MOFの柔軟な構造を利用すると、特定の物質のみを透過させることができます。

例えば汚染が深刻な地域の海水を浄化するために、不純物や有害物だけを通さないとうな設計をすることが可能です。

今後は水不足が深刻になることが予測されており、そういった分野での利用も今後応用が期待されています。

触媒

MOFの中に反応性の高い金属を組み込むことで、触媒として活用することが積極的に検討されています。

例えばこれまで利用が難しかったCO2を有用な物質に変換する検討が積極的にされています。

MOFよりも更に新しい材料がある?

MOFよりも更に新しい材料が開発されて注目を集めている材料があります。

それはCOFです。

COFは共有結合性有機構造体を意味しており、Covalent Organic Frameworlsの略です。

COFは「2005年に見つかった新しい材料で、有機化合物が共有結合してできた注目の多孔質材料」です。

MOFは有機分子と金属イオンからできているのに対してCOFは有機分子同士が共有結合でできた材料です。

こちらについては以下の記事で詳しく書いていますので、是非参考にしてください。

引用文献

Seidi F, Jouyandeh M, Taghizadeh M, Taghizadeh A, Vahabi H, Habibzadeh S, Formela K, Saeb MR. Metal-Organic Framework (MOF)/Epoxy Coatings: A Review. Materials. 2020; 13(12):2881. https://doi.org/10.3390/ma13122881

コメント