誰でもわかる【FCC触媒とは?】成分から触媒の種類まで徹底解説

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総合化学メーカーで研究開発・新規事業開発を担当。

化学や事業開発に関する情報を「分かりやすく、深く理解できる」ことを目指して発信中。

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化学の知識

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工業的に使用されている有名な触媒としてFCC触媒があります。

今回はこのFCC触媒について化学メーカーで触媒研究を行っていた私がわかりやすく解説していきます!

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FCC触媒とは?

まずは3分でFCC触媒の概要を理解!

それでは解説していきます。

まずFCC触媒とは、FCCプロセスで使用される触媒です。

そのままですね・・・

1つ1つ解説していきますね。

FCCとは、Fluid Catalytic Crackingの略で、

日本語では、流動接触分解と呼ばれます。

つまりFCC触媒とは、流動接触分解というプロセスで使用される触媒のことです。

この流動接触分解は、石油の中でも重たい留分をガソリンなどの有用な物質に分解する技術です。

そしてこの分解を促進させるためにFCC触媒が使用されています。(接触流動分解にはFCC触媒が不可欠)

ちなみに、石油の重たい留分に触媒を接触させて、分解するというイメージから、流動接触分解と考えたら大丈夫です!

そしてこの技術がなぜ有用なのかというと、

石油の中でも重たい留分=そのままでは使用することが難しい。

そしてその使用が難しい重質油から有用なガソリンが製造できるため、現在ではとても重要な技術です!

ちなみにFCC触媒ではガソリンだけではなく、その時の需要に応じて重要な基礎化学品であるプロピレンなども作り分けることができます。

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FCC触媒は具体的にどんなもの?

FCC触媒ではゼオライトが使用されている

現在使用されているFCC触媒は、ほとんどY型ゼオライト系の触媒です。

そのため見た目としては白い粒子の固体です。

この粒子のサイズはおおよそ50μm程度で、この粒子が重質油分と激しく接触することで、重質油分の分解が起こります。

ゼオライトに関する詳しい説明は以下の記事で解説しているので、よかったら参考にしてください!

FCC触媒の構成とは?

FCC触媒はこれまでY型のゼオライトを用いて重質油分をガソリンなどの有用な物質に分解するということを学んできました。

ここからはFCC触媒をさらに詳しく見ていきましょう!

FCC触媒の主成分は確かにY型ゼオライトです。

しかしFCC触媒に含まれるゼオライトは全体の触媒量の10%-40%程度です。

FCC触媒の反応のメインはゼオライトですが、そのほか強度を出したり耐久性を出す目的で助剤が添加されています。

具体的にはリカ、アルミナ、カオリン、そしてゼオライトとこれらの助剤を結合するためのバインダーから構成されています。

FCC触媒 構成 成分 ゼオライト カオリン
出典:https://www.nouryon.com/markets/catalyst-production/fcc-oil-refining/

このイメージとしては薬がわかりやすいかと思います。

薬も活性成分(例えば痛みを緩和する作用をもつ物質など)はほんの僅かしか入っていません。

助剤を加えて整形することで、①飲みやすくなる②しっかり体の中で溶ける、などの機能が加えられています。

FCC触媒も同じです!

ネットでFCC触媒を調べたら、FCC触媒=ゼオライトなんだ!

と思ってしまいがちですが、実はゼオライトは10%-40%程度しか含んでおらず、残りは助剤である、ということを覚えておいてください。

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FCC触媒に求められる特性

選択性

FCC触媒に求められる特性としてまず大事なのが、選択性です。

選択性とは、目的の物質(ガソリン)をどれだけ選択的に作れるかということを意味しています。

つまりあまり有用ではない重質油から、いかに有用なガソリンがとれるのか?ということを意味しますのでとても重要なポイントです。

ちなみにこの選択性を上げるために、ゼオライトの作り方を変えたり、ゼオライトにシリカやアルミ以外の金属を導入したりなどの検討が行われています。

水熱安定性

水熱安定性とは、高温の水蒸気に対する安定性です。

FCC触媒は反応するにつれてどんどん劣化していきます。(活性が低下する。)

これは反応を繰り返し行うことで、触媒にスス(炭素)がついて汚れてしまうイメージです。

実際に触媒を使っていると、最初は白色ですが、だんだん黒くなっていきます。

そしてこの汚れを落とす作業(触媒の再生作業)が頻繁に行われます。

この再生作業では高温の水蒸気に当てますので、この時に触媒が壊れないような耐久性(水熱安定性)が求められます。

何か調子が悪くて修理を出したら、他のところが壊れてしまっては困る、というイメージです。

この水熱安定性を高める方法として、ゼオライトの合成方法や、ゼオライトに含まれるアルミやシリカの比率などが検討されています。

機械的強度

機械的強度は、触媒が何かに強くぶつかったりしても、壊れない強さのことです。

流動接触分解はその名前の通り、触媒を流動させて接触させるので、触媒にはかなりのエネルギーがかかります。

そういった条件でも触媒が削れていったり、壊れたりしないような機械的強度が必要です。

そしてこの機械的強度を出すためにも、ゼオライトの中にシリカやアルミナなどの助剤が添加されています。

FCC触媒の今後

ケミカルリサイクル用の触媒としても有用?

FCC触媒は重質油分を分解する触媒です。

そしてこの重質油分は石油が原料です。

カーボンニュートラルへの転換が求められるなか、このFCC触媒が新たな分野で注目されています。

それがケミカルリサイクル用の触媒です。

ケミカルリサイクルとは、廃棄されたプラスチックを一旦溶かして、また新しいプラスチックの材料にするというリサイクルの方法です。

このケミカルリサイクルでプラスチックを溶かすと油のような混合物が生成されます。

この混合物をFCC触媒と反応させることで、この混合物が分解されてガソリンや化学品に分解されるという原理です。

FCC触媒の市場規模

世界のFCC触媒の市場規模は2021年が約3500億円であるのに対し、2028年には約4300億円になることが予想されています。

FCC触媒は世界でもトップクラスに使われている触媒ですので、市場規模も大変大きいことが分かりますね。

なおこの使用規模は以下のURLを参照して作成しました。

詳細が気になる方は是非確認してみてください。

FCC触媒の世界市場 (2022年)
世界のFCC触媒の市場規模は、2021年に26億9,864万米ドル、2028年末までに32億9,963万米ドルに達すると予測されています。また、2022年から2028年の間に2.48%のCAGRで成長する見通しです。

FCC触媒を製造販売する国内メーカー

FCC触媒を製造する代表的な国内メーカーは日揮触媒化成です。

日揮触媒化成は国内最大の触媒メーカーで、FCC触媒の他にも水素化プロセス用触媒、ケミカル・環境保全触媒など様々な触媒を開発・製造を行っています。

そして製造された触媒が石油化学メーカーのプラントに入って、身近なガソリンや化学品を製造するのに役立っています。

まとめ

普段聞き慣れないFCC触媒について解説をしました。

触媒技術は表に出て来ない脇役的存在ですが、人々の生活を支えるのにかけがえのない技術の1つです。

今でも技術開発は進められておりとても興味深い分野ですので、是非参考にしてください!

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