繊維業界の転職は難しい?繊維メーカーへの転職【未経験でも可能?】

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繊維産業は、天然や合成の繊維を扱い、その糸を紡ぎ、織り、染めるなどの一連のプロセスを包含する広範な産業です。本記事では、繊維業界に興味を持つ求職者向けに、この業界の最新の潮流、職業の種類、および業界内の主要企業について詳細に説明し、繊維業界の全体像を把握する手助けをします。

繊維業界は、素材から最終製品に至るまでの多様な工程を含んでおり、この記事を通じてその仕組みや動き、業界におけるキャリアパスの選択肢について深く掘り下げます。

この記事を書いた人

中堅化学メーカーで製造・研究開発・営業を経験。営業期間が長く、研究開発に戻りたいという思いから転職活動を開始。業界最大手の化学メーカーへ転職し、年収300万以上アップに成功しました。実体験を基にキャリアアップに関わる情報を発信。

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繊維業界とは?

繊維産業は、日常生活に欠かせない洋服やスーツなどの衣料品に使用される素材を提供する、身近ながらも重要な産業です。この産業は、紡糸、紡績、製糸、縫製、染色といった工程で天然繊維や化学繊維を扱っており、私たちの「衣」の需要を満たしています。

繊維産業の歴史は18世紀の産業革命に始まるイギリスにまで遡ります。この時期には、産業や社会の構造が大きく変わり、繊維産業は大量生産の波に乗って拡大し続けました。

この動きは20世紀の日本にも波及し、東レや帝人などの大手企業が成長し続けている現在に至ります。

繊維の種類

繊維産業で扱う素材は、主に化学繊維と天然繊維の二つに分類されます。

化学繊維

化学繊維は、ポリエステル・ナイロンなど化学的手法によって製造される繊維です。

化学繊維の応用範囲は非常に広く、単に衣類用素材に留まらず、自動車や飛行機の製造、さらには医療分野における革新的な用途にも及んでいます。

これらの繊維は、その特有の強度、軽量性、耐久性などの特性を活かし、自動車や飛行機の重要な部品や構造素材として使用されており、輸送機器の性能向上に貢献しています。

また、医療分野では、人工血管などの生体材料として使用され、これらの化学繊維は人体への適合性や機能性を提供し、医療技術の進展に大きく貢献しています。

天然繊維

一方で、天然繊維は、綿やウールなど自然界から採取される素材を基に作られます。

天然繊維の加工には、繊維の長さに基づいた特有の工程が必要です。絹を除く多くの天然繊維は、比較的短い長さを持っています。例えば、綿や羊毛はおよそ20mmの長さであり、麻は最大で600mm程度になります。これらの短い繊維を利用して長い糸を作るためには、「紡績」という工程が不可欠です。

紡績の過程では、これらの短い繊維を組み合わせ、撚り合わせて1本の長い糸に変換します。この工程によって、繊維は強度と柔軟性を得て、衣類等の製造に適した形態に変化します。

現代では、化学繊維が主流となり、より高性能で機能的な素材の研究開発が進められており、将来的にはさらに多様な化学繊維の開発が期待されています。

繊維業界の業種

繊維産業の職種は多岐にわたり、それぞれが産業の発展に欠かせない役割を担っています。以下は、繊維産業の主要な職種とその業務内容を紹介します。

研究開発

この領域では、繊維の種類や特性に関する研究、実験、解析を行います。また、商品の性能や安全性の評価、新しい生産技術の開発なども担当します。日々の品質向上のために、改善と革新を重ねています。アパレル用の糸、人工皮革、建築用断熱材、自動車内装など、用途が多岐にわたるため、幅広い繊維知識が要求されます。

商品開発

商品開発では、顧客のニーズに基づいた商品設計が主な業務です。自動車メーカーやアパレル業界など、繊維製品を必要とするさまざまな顧客と連携しながら製品開発を行います。この職種では専門性と同時に、広い視野を持つことが求められます。

生産

繊維企業の多くは自社工場で糸や生地を大量生産しており、生産部門はその運営と品質管理を担います。生産設備の設計や開発、生産ラインの監視、問題の対処や効率的な生産方法の立案など、多岐にわたる業務を行います。高度な専門性が要求される職種です。

営業

営業職は、自社製品の販売と顧客のニーズの把握、それらを研究開発や商品開発部門にフィードバックする役割を持ちます。アパレル用糸から建築材料、自動車内装に至るまで、多様な製品に関する知識が必要です。

繊維業界が未経験という方は、比較的専門スキルを求められない、製造・営業・総務・事務などの職種が狙い目です。これらの職種はメーカーならどこでも存在するため、ステップアップのためにスキルを身につけるのも良いでしょう。

繊維業界はどんな人材が求められる?

繊維業界でのキャリアには以下のようなスキルや特性が特に重要です

  • 革新的な素材開発に対する発想力: 新しい素材の開発に必要な創造的思考能力。
  • トレンドへの敏感さ: ファッションデザイナーや市場が求める素材や製品の流行を迅速に把握する能力。
  • 柔軟な姿勢: 日々の変化に対応し、継続的に学習し適応する能力。
  • コミュニケーション力と関係構築力: 顧客との信頼関係を築くための対人スキル。
  • グローバル思考と英語力: 国際的な市場で活躍するためのグローバルな視野と言語能力。

これらのスキルや特性は、繊維業界で成功するための基盤となり、業界内での成長と展開のために重要です。

繊維業界の動向

繊維業界は、常に変化と進化を遂げている産業です。その動向について、解説していきます。

市場規模

繊維業界の市場規模は、近年減少傾向にあります。具体的には、2018年からの数年間で市場は縮小し、2020年から2021年にかけての売上高は約3兆4,314億円にまで落ち込んでいます。この縮小の一因として、2020年に発生した新型コロナウイルスのパンデミックが挙げられます。このパンデミックの影響で、衣料品はもとより、航空機や自動車などの産業用繊維の需要も大幅に減少しました。

しかし、パンデミックによる市場の変動は、一部の繊維製品には逆の影響をもたらしました。具体的には、マスクやガウンに使用される不織布など、医療分野での使用が増加した繊維製品があります。この結果、東レ、三菱化学、シャープ、アイリスオーヤマなどの企業は、不織布の増産やマスク、ガウンの生産に力を入れることになりました。これは、市場のニーズに応じて柔軟に対応する業界の能力を示すものであり、特定の製品の需要が高まることで、市場全体の落ち込みをある程度補うことができた例と言えるでしょう。

大手は高機能繊維に注力

日本の大手繊維企業は、高機能繊維への注力を強化しています。これには、炭素繊維、アラミド繊維、高機能ポリエチレン繊維など、高い付加価値を持つ製品への生産シフトが含まれます。これらの製品は価格競争力があり、さらに技術的な優位性を有しています。

さらに、繊維事業で培ったノウハウを活かし、樹脂や工学フィルム、電子関連、バイオ、医薬などの非繊維事業への拡大も進んでいます。これにより、企業はコア事業の範囲を広げ、多様な市場でのプレゼンスを確立しています。

特に注目されるのが「炭素繊維」です。アクリル繊維を焼成して作られるこの高機能繊維は、鉄の4分の1の重さでありながら10倍の強度を持つという優れた特性を有しています。このため、スポーツ用品(例:ゴルフクラブ、釣り竿)から、自動車、航空機、宇宙用品の部材として広範な産業で利用されており、その需要は拡大しています。

これらの動向は、繊維産業が単に従来の衣料品市場に留まらず、技術革新を通じて新しい市場に進出し、さらなる成長を遂げていることを示しています。高機能繊維の発展は、繊維産業の未来を大きく左右する要素の一つと言えるでしょう。

海外展開

日本国内の繊維業界は、中国や東南アジアからの安価な大量輸入や衣料品市場の伸び悩みといった要因により、縮小傾向にあります。しかし、この国内市場の状況に対し、繊維メーカーは海外市場、特に新興国への進出に力を入れています。新興国では人口増加や経済成長に伴い、繊維製品の需要が増加しているためです。

例えば、東レは米国の航空機製造大手ボーイング社と共同で、1兆円を超える次世代航空機の開発に関わる炭素繊維の大型受注を発表しています。このような大規模プロジェクトは、繊維メーカーにとって重要な成長機会を提供します。

さらに、東レはインドに自動車用エアバッグ生地の製造工場を設立し、帝人はタイに耐熱性に優れたアラミド繊維の製造・販売を行うグループ会社を設立しています。これらの動きは、国内繊維メーカーがグローバルな市場でのプレゼンスを高め、新たな成長機会を追求していることを示しています。国内市場での縮小に直面しつつも、海外市場への積極的な進出により、これらの企業は新たなビジネスチャンスを掴んでいるのです。

デジタル化の推進

繊維産業におけるデジタルツールの多様化は、企業が抱える様々な課題に対応し、業務を効率化する大きな役割を果たしています。特に、企画や生産段階では、AIによる需要予測や3Dモデリングソフトウェアを用いたパターン製作が導入され、これにより生産効率が向上し、サンプル製作の回数と生地廃棄が削減されています。例えば、TFLでは3Dパターン製作によってシステム上でのサンプル作成が実現し、生産決定までの工程が大幅に簡素化されました。

さらに、生産に関わる工場やサプライヤーの情報をクラウドで一元管理することにより、品番や仕様のミスを防止する取り組みも進んでいます。加えて、店舗ごとの在庫状況をデジタル化し可視化することで、商品の正確な販売戦略を立てることが可能になっており、不要な値引き販売を減らし在庫消化率を向上させています。

また、マスカスタマイゼーションやサブスクリプションサービスの導入により、個別の顧客ニーズに応えながらも大量生産を実現することができ、供給量の適正化が図られています。これらのデジタル化の進展は、繊維産業において新たなビジネスチャンスを生み出し、産業の発展に寄与しています。

環境への対応

繊維産業は、その製品ライフサイクル全体にわたって環境問題に直面しています。繊維の生産から衣服の製造、販売、そして最終的な廃棄に至るまでの過程で、さまざまな環境汚染が生じる可能性があります。特に化学繊維の生産において、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの素材は基本的にプラスチック由来です。

これらの化学繊維は焼却時に適切な処理が行われないと、人体に有害な物質を発生させるリスクがあります。このような状況に鑑み、多くの企業では環境負荷を軽減するための取り組みを強化しています。

これには、原材料の調達から生地や衣服の製造、輸送、廃棄に至るまでの各段階で環境に配慮した方法を採用することが含まれます。例えば、リサイクル可能な素材の使用、廃棄物の削減、持続可能な資源の利用、省エネルギーといった環境に優しい生産技術の開発などが挙げられます。

このような環境対策は、企業の社会的責任を果たすだけでなく、環境に配慮した製品への消費者ニーズに応えることで、ビジネスチャンスを広げる機会にもなります。繊維産業の持続可能な発展に向けたこれらの取り組みは、業界全体の未来にとって重要な意味を持っています。

繊維業界の業績ランキング

繊維業界における企業の売上と経常利益のランキングを理解することは、その企業の財務力とビジネスの健全性を判断する上で重要です。売上は三菱ケミカルグループが最も高く、次いで東レ、旭化成となっています。一方で経常利益では、三菱ケミカルグループがトップで、旭化成、東レの順に続きます。

この情報から得られる重要なポイントは以下の通りです:

  • 売上の高さ: 企業の財務力やビジネスの規模を示しており、売上が高い企業は大規模なビジネスを行っていることが分かります。
  • 資金調達力: 売上が高い企業は、金融機関からの融資を受けやすい傾向にあります。これは、企業の資金調達力の指標としても重要です。
  • 利益と利益率: 企業が行っているビジネスの成功度合いや付加価値の高さを示しています。利益が少ない、または赤字である場合、ビジネスモデルに何らかの問題がある可能性があります。

さらに、単に現在のランキングだけでなく、各企業の成長率や過去の業績も見ることで、業界全体の健全性や将来性をより深く理解することができます。これらの指標は、繊維業界でのキャリアを考えている人にとって、企業を選ぶ際の重要な参考になります。

まとめ

繊維業界への転職は、未経験者にとっても可能性がありますが、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。繊維業界は革新的な素材開発やトレンドの追求、環境問題への対応、デジタル技術の活用など、多様な分野で進化を遂げています。この業界で成功するためには、創造性豊かな発想力、市場の流行に敏感な洞察力、顧客とのコミュニケーション能力、そしてグローバルな視野を持つことが重要です。また、企業の売上や利益率を理解することは、企業選びにおいて役立ちます。

未経験者が繊維業界への転職を検討する場合、特定の技術や知識が求められる職種もあるため、関連するスキルや経験を身につけることが有利に働くでしょう。しかし、繊維業界はその性質上、新しいアイデアや異なる背景を持つ人材を求めている場合もあります。そのため、自分の強みや興味を生かし、業界が直面する課題に対してどのように貢献できるかを明確にすることが、転職成功の鍵となります。繊維業界は、その多様性と進化する性質から、多くのチャンスと可能性を秘めている産業です。

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