誰でもわかる【リグニンとは?】注目されているバイオプラスチックの原料について分かりやすく解説

プラスチック・樹脂

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リグニンって最近注目されているけど、どんな材料?

どういった用途に使われるのかな?

本記事ではリグニンの概要から用途まで、化学メーカーで研究開発をしている私が、だれでも分かるようにやさしく解説します!

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まずは3分で理解!リグニンとは?

まずリグニンは植物、スギなどの木に含まれている高分子です。

下の画像に記載していますが、一般的な木材は、40%-50%がセルロース(紙の原料)でできており、20%-25%がヘミセルロース、そして25%-35%がリグニンでできています。

リグニン 構成 比率 
出典:http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/matechem/about.html

例えばバナナなどにはビタミンCや糖分などを含んで構成されています。

一方スギなどの木にはリグニンという高分子を多く含んで構成されているとイメージしてください。

ではこのリグニンという物質はどういうものでしょうか?

少し分かりにくいですが、リグニンは炭水化物の一種で、不規則なフェノール化合物総称です。

例えば炭酸飲料というと、コーラやサイダーなどの飲み物の総称です。

このようにリグニンも炭素、酸素、水素を含んだ下の図のようなフェノール系の物質の総称です。

リグニン 構造例
リグニンの構造例 出典:wikipedia参照
リグニン パウダー 例
リグニンのパウダー

ここで大事なこととして、リグニンはあくまで総称で、1つの物質ではないということを覚えておいてください。

リグニンがなぜ総称なのかというと、植物の中で合成されるため、あらゆる複雑な構造を取ります。

そして、このリグニンは植物に必須の物質で、細胞壁の中や間に存在し、細胞を結合させることで、植物に耐久性を与えるような役割を持っています。

例えば下の画像の木がこのように高く育ち、強風などでも耐えられるのは、このリグニンがあるからこそです。

リグニンの役割で木など植物は耐久性を持っている。

そしてリグニンが最も注目されている理由の1つは、木材などの2~3割はリグニンで地球上でも最も量の多い物質の1つとして知られているからです。

そしてこの木材などは植えたり育てることで何度でも利用することができるため、リグニンを有効的に利用することができれば環境に優しいということで、大変注目されています。

(石油は使えばなくなってしまいます。)

しかし上でも述べましたが、このリグニンは大変複雑な構造をしており、その利用が難しいことが一番の課題です。

しかも特定の物質ではなく、様々な構造を持っている。(植物の種類によっても異なる。)

そのためリグニンを利用して新しい化学物質を作ろうとしても、リグニン自身の構造も決まったものではないため、特定の物質を作るのが困難です。

(料理で例えると、塩を使えば毎回同じ味になります。一方リグニンは複雑でいろいろな構造を持つため、調味料として使ったら毎回違い味になってしまうイメージです。そのため使いづらいことが課題です。)

そこで今回はリグニンの利用方法、利用例、今後の展望などをわかりやすく解説していきます。

また以下動画でもリグニンについて分かりやすく説明されていますので、是非参考にしてください。

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リグニンの製造方法

現在はリグニンを目的として製造されることはほとんどありません。

あくまで現在は副産物です。

先程木材の主な構成物質はリグニン、セルロース、ヘミセルロースと説明しました。この中でも現在最も使用されているのはセルロースです。

セルロースは紙を作るするのに必須な物質で、大量のセルロースが製造されています。

そしてこのセルロースを製造する際にリグニンが副生されます。

このリグニンも紙の原料として利用することができれば良いのですが、リグニンは入っていると逆に悪い効果を与えてします。(リグニンは紙が黄ばむ原因になってしまいます。)

そのため原料リグニンは利用するのが大変難しいため、大半は燃やして廃棄しているのが現状です。

そのためこのリグニンを利用することが積極的に研究されています。

その他リグニンはバイオエタノールを製造する際の副生成物としても得られます。

このようにリグニンは現状あくまで副産物として得られるもので、その価値はあまり高くありません。

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リグニンの利用方法

リグニンの利用方法は大きく分けて2通りあります。

1つ目はリグニンを分解してフェノールなどの物質として利用するものです。

そして2つ目は、リグニンを化学反応して、新しい物質に変化させてプラスチックなどにするものです。

これを改質リグニンと呼びます。

改質リグニンはポリエチレングリコール(PEG)改質リグニンの略称で、PEGリグニンやグリコールリグニンとも呼ばれています。

リグニンを利用した材料についてはいくつかの会社が行っています。

例えば住友ベークライトは2020年8月に植物由来のリグニンを活用したフェノール樹脂の量産化に成功したとしており、今後の使用が期待されています。

またアイカ工業もリグニンとフェノール樹脂を組み合わせた、リグニンフェノール樹脂を開発したとし、商用化も発表しています。

その他にも世界中で様々な応用が進んでおり、今後もさらなる成長が見込まれています。

リグニンに関する研究動向

リグニンは地球上に数多くする再生可能資源ですが、現在はその利用の活用が進んでおらず、様々な研究がなされています。

その研究の例としては、主にリグニンの分解方法、リグニンの利用方法に分けられます。

以下の表に特許の例を示したのでよかったら参考にしてください。

特にリグニンの利用に関する多くの研究が行われています。

番号分類内容
特開 2017-52895リグニン利用フェノール樹脂と、リグノフェノールとを含む接着剤であって、フェノール樹脂とリグノフェノールの質量比が、7.0/3.0~2.7/7.3 である、接着剤
特開 2017-8234リグニン分解変性リグニンの製造方法、新規変性リグニン及び新規エポキシ樹脂
特開 2017-52717リグニン分解芳香族化合物の製造方法は、パラジウム、白金、ルテニウム、およびニッケルから選ばれる少なくとも一種を含む触媒の存在下、リグニン含有物中のリグニンを、温度 374℃~500℃、圧力 22MPa~60MPa の超臨界水中で分解。
特開 2016-155940リグニン利用水溶性樹脂に紫外線吸収剤として用いることができるリグニン組成物
特開 2016-108392リグニン利用セメント添加剤として用いた場合の減水性能に優れたリグニン誘導体の提供
特開 2016-60813リグニン利用省エネルギーで効率よくリグニン含有材料から精製リグニンを得て、この精製リグニンを用いて、加工性、強度及び耐熱性の良好な熱硬化性樹脂組成物を提供
https://www.naro.go.jp/laboratory/nfri/introduction/joho5_lignin(20170515).pdf を参照

まとめ

リグニンは最近注目されているバイオ由来の原料で、今後の成長が期待されています。

車の材料用途などにも最近は検討がされており、将来的にはより身近なものになりそうですね!

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