誰でもわかる【SBA-15】とは? 概要から用途まで徹底解説

化学の知識

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SBA-15はメソポーラスシリカの1つで、多孔質材料です。

SBAはSanta Barbara Amorphousの略で、カリフォルニア州立大学サンタバーバラ校で開発されたことに由来しています。

今回は化学メーカーで研究をする私が、分かりやすく「SBA-15」について解説していきます!

この記事で分かること

SBA-15の概要

SBA-15が注目される理由・用途

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RYOTA

34歳化学メーカー研究職。製造・営業・研究開発を経験。『研究開発に戻りたい』という思いから転職活動を開始。中堅化学メーカーから業界最大手へと転職し、300万以上の年収アップに成功。

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SBA-15とは?まずは1分で概要を理解!

SBA-15は多孔質材料です。

多孔質材料の分類を以下の図に示しました。

まずはSBA-15が多孔質材料の中でどの位置づけにあるのか理解することが重要です。

SBA-15 多孔質材料

そして上の図を踏まえて、SBA-15の概要は以下のとおりです。

SBA-15とは?

メソ孔を持つメソポーラス材料

シリカからできているメソポーラスシリカの一種

メソポーラスシリカの中でも水熱安定性に優れている注目の材料

ここからは1つ1つ解説していきます。

まず多孔質材料とは規則的な細孔(穴)が連続的にある材料のことを言います。

そしてその細孔のサイズによってその材料の種類が分類されます。

  • マイクロ孔:直径2nm以下の細孔
  • メソ孔:直径2nm-50nmの細孔 
    このメソ孔をもつものがメソポーラス材料
  • マクロ孔:直径50nm以上

SBA-15はこの規則的なメソ孔を有する材料です。

ではこのメソ孔を持つ材料の中でSBA-15はどのような位置づけでしょうか?

実はメソ孔を持つ材料も世の中にはたくさんあります。

例えば炭素で構成される、メソポーラスカーボン。シリカで構成されるメソポーラスシリカなどがあります。

そしてSBA-15はこのメソポーラスシリカの一種です。

SBA-15はこのメソポーラスシリカの中でも最も有望な材料という位置づけです。

メソポーラスシリカにもいろいろな種類があります。目的に応じて細孔のサイズや耐久性が調整されて様々なものが合成されています。

有名なものとしてはMCM-41がありますが、このSBA-15はMCM-41と比較しても高い水熱安定性などを有することで大変注目されている材料です。

MCM-41については以下の記事で解説しています。

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SBA-15が注目される理由

多孔質材料で最も有名な材料はゼオライトではないでしょうか。

歴史も長く、これまで幅広い研究がなされてきました。

そしてそのゼオライトの最大の特徴はその細孔の小ささ(マイクロ孔)にあります。

しかし、最近ニーズの広がってきているタンパク質やDNAなどの巨大分子はゼオライトの細孔よりも大きいことが一般的です。

そのためこれらの分子はゼオライトの細孔に入れないため、吸着させたり、反応するのに向いていません。

一方、メソポーラスシリカはこれらの巨大分子を収納するのにちょうどよい細孔を持っており、吸着や取り込むことが可能です。

しかし従来のメソポーラスシリカは水熱安定性が低いなどのデメリットがあり、特定の場面でしか利用できないという問題がありました。

一方SBA-15は高い安定性や耐久性を持っており様々な場面での活用が現在期待されています。

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SBA-15の用途

SBA15の用途

1. 触媒と触媒担体

SBA-15は高い比表面積(500~1000 m²/g)と大きな細孔容積、優れた熱的・化学的安定性により、触媒および触媒担体として広く利用されています。

(1) 触媒担体

  • 金属触媒の担持: SBA-15のメソ孔にPt、Pd、Au、Niなどの金属を分散させることで、石油精製や水素化反応の触媒として使用。
  • 酸触媒: SBA-15の表面をアルミニウムやリン酸などで修飾することで、固体酸触媒として利用(例:酸化反応、エステル化反応)。
  • 酵素固定化: バイオ触媒用途では、酵素をSBA-15に固定化し、バイオ燃料生産や医薬品合成で活用。

(2) 特定反応の促進

  • 油脂水素化反応: メソ孔内に触媒を固定化し、均一かつ選択的な反応を可能に。
  • 脱硫触媒: SBA-15を用いて天然ガスや石油製品の硫黄化合物を除去。

2. 吸着剤

SBA-15の規則的な孔構造と高い比表面積により、特定物質を効率的に吸着・捕捉する用途があります。

(1) ガス吸着剤

  • 二酸化炭素(CO₂)の吸着: 環境分野でのCO₂回収に使用。表面をアミン化修飾することで吸着能力が向上。
  • 水素貯蔵: 燃料電池や水素エネルギーシステムでの応用。

(2) 水処理吸着剤

  • 重金属除去: SBA-15はPb²⁺、Hg²⁺、As⁵⁺などの重金属イオンを吸着し、水質浄化に寄与。
  • 有機汚染物質吸着: 農薬や医薬品のような微量有機汚染物質を除去。

(3) 揮発性有機化合物(VOC)の吸着

  • 室内空気質改善や工業排気ガス処理で、揮発性有機化合物を効率的に吸着。

3. 医療およびバイオテクノロジー分野

SBA-15の生体適合性と多孔構造を活かし、医療やバイオ分野でも利用されています。

(1) ドラッグデリバリーシステム(DDS)

  • 薬剤の担持: SBA-15の孔内に抗がん剤、抗菌剤、抗ウイルス薬を充填し、標的部位への制御放出を実現。
  • 溶解度向上: 難溶性薬剤をSBA-15に担持することで溶解度を改善。

(2) イメージングおよび診断

  • MRI造影剤: SBA-15の孔にガドリニウム(Gd³⁺)を導入し、MRI造影剤として利用。
  • 診断プローブ: 表面を修飾して、特定の生体分子と結合するプローブとして使用。

(3) 組織工学

  • 細胞培養基材: SBA-15の規則的な孔構造を利用して、細胞増殖や組織再生を促進。

4. エネルギー分野

エネルギー変換と貯蔵においてもSBA-15が活用されています。

(1) バッテリー材料

  • リチウムイオン電池: SBA-15を電極材料の骨格として使用し、イオンの高速移動と高容量を実現。
  • 電解質材料: 固体電解質の基材としてSBA-15を利用し、電池効率を向上。

(2) 燃料電池

  • 電極触媒担持体: 燃料電池の触媒(白金系触媒など)をSBA-15に担持し、効率的な反応場を提供。

(3) 光触媒

  • 太陽光水分解: SBA-15に酸化チタン(TiO₂)を担持し、水分解反応で水素を生成。

5. 分離技術

SBA-15は特定分子の分離を可能にするため、化学工業で利用されています。

(1) クロマトグラフィー担体

  • タンパク質や酵素の分離: SBA-15の大きなメソ孔はバイオ分子の分離に適している。
  • 有機化合物の分離: 高い選択性を持つ吸着剤としてクロマトグラフィーで使用。

(2) 膜分離

  • SBA-15を利用したナノ複合膜が、ガスや液体の分離に利用可能。

6. ナノテクノロジー

SBA-15はナノテクノロジー分野でも広く応用されています。

(1) ナノコンポジット材料

  • ポリマーとの複合化: ポリマーと混合して高強度で耐熱性の高い材料を作製。
  • 光学材料: SBA-15を蛍光分子で修飾し、発光デバイスとして利用。

(2) センサー

  • SBA-15の高感度を利用して、ガスセンサーやバイオセンサーとして利用。

7. 環境保護用途

SBA-15は環境分野でも持続可能性を支える重要な材料です。

(1) 触媒支援での廃棄物処理

  • 汚染物質の分解: SBA-15上に担持された触媒を用いて有害物質を分解(例:染料分解、農薬分解)。
  • 排水処理: 工業排水中の有機汚染物質の分解除去。

(2) 再生可能エネルギーの支援

太陽光や風力エネルギーシステムの材料改良での使用。

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